同レポート「―事例編―」2.1.1 購買履歴の事例1(ID-POS データ)を参考にした、仮想の事例(デモ)
データはすべて教材用の合成データです。
小売事業者の ID-POS データを、別の一般事業者へ渡す。
小売事業者が持つ ID-POS データ(誰が・いつ・どの店で・何を買ったか)を 匿名加工情報 に加工し、別の一般事業者へ提供する。
消費者の基本属性(年代・性別・居住エリア)× 購買傾向 から、新商品開発や販売促進に活かす。
集計表にすると、属性 × 購買傾向の細かな分析ができない。
→ レコードの形は残しつつ、誰の記録かをたどれないように加工する。
第三者に渡す以上、受け取った側が個人を特定できないことが必要。
→ 守るべき 作成基準(識別できる記述・連結符号・特異な記述の削除など)がある。
特定の個人を識別できず、かつ元に戻せないように加工した情報。 第三者提供や公開まで想定できる。
ID-POS データの構造。3つのテーブルが会員IDでつながっています。
customers
transactions
purchases
customers 1 : N transactions 1 : N purchases
case01 は「顧客 — 購買」の2階層でしたが、ここは 顧客 → 取引(来店) → 明細(商品) の3階層。 取引の粒度をどう扱うかが設計上の論点になります。
顧客属性にはそのままでは個人が特定できる項目が、取引・購買には組み合わせると特定につながる項目(利用日時・店舗・珍しい商品)が含まれます。
① 規則で必須の措置を確定 → ② 情報特性から自主的に判断。 匿名加工では見る観点が増えます。
匿名加工情報には 一律の作成基準 があり、次の各号の措置が 規則により必須。
第1〜4号は削除・置換、第5号は一般化などで対応します。
電話番号は、それだけでは「誰か」は分かりません(単体での識別性は低い)。 しかし本人に到達でき、外部情報との 照合 の手がかりになるため、第1号(特定の個人を識別できる記述等)として削除します。
case01 のクレジットカード番号と同じく、必須になる理由が識別性の高さとは別の軸にあります。
★ が匿名加工で新たに効いてくる観点。「元に戻せない」を担保するために増える視点です。
施行規則第34条の枠組みに沿って、項目ごとの方針を決めます。
匿名加工の目的は 再識別・復元を断つこと。個人を特定できる記述・連結符号・特異な記述を落とし、準識別子は「同じ属性の人が十分いる」粒度まで丸めます。性別・店舗名は他項目の加工で特定性が下がるため残します。
レコードをつなぐIDが要るなら、case01 の整理番号と同じでは?——ここが仮名と匿名の分かれ目です。
加工後も、顧客属性テーブルと購買履歴テーブルを 仮ID でつないで「属性 × 購買傾向」を分析できる。
匿名加工では、元の会員IDと仮IDを つなぎ直せる対応表を残しません(第34条3号=連結符号の削除)。
「その組合せに該当する人が少ない」個人が特定されやすくなります。
方針を、具体的な処理に落とし込みます。
A000001
YYYY-MM-DD HH:MM
〜499/500〜999/1,000〜1,999/2,000〜4,999/5,000円以上
加工後の連結: 顧客属性・購買履歴は仮IDで結合(取引の粒度は保つが、取引IDは残さない)。
notebooks/case02_anonymized.ipynb
7. 該当者の人数の確認。 匿名加工は「削除・丸めをした」で終わりではなく、その丸めで十分かをデータで確かめるところまでが設計です。
匿名性と、分析の成立の両方を確かめます。
顧客属性は 6項目 → 4項目 に縮約。
customers_anon(顧客属性)
A
purchases_anon(購買履歴)
準識別子の組合せ (年代 × 性別 × 市区郡) ごとの人数を数え、該当者の少ない組合せがないかを見ます。
規則上の必須措置をすべて満たしても、「その組合せに1人しかいない」顧客が残っている。 実際の提供では、ここからさらに丸めを調整する必要があります。
該当者の人数に応じて丸めの度合を決める。
case01(仮名)が「照合しなければ特定できない」状態づくりだったのに対し、 匿名加工は 丸めの度合を対象データに合わせて設計する ぶん、ひと手間増えます。
年代別 購入カテゴリ トップ3
年代で購入カテゴリの傾向が異なる = 属性 × 購買傾向の分析は匿名加工後も成立。
年代別 金額区分の構成(割合・一部)
匿名加工情報を第三者提供する際は、次の取り扱いが求められます。
匿名加工には 一律の作成基準(施行規則第34条) がある。 1〜4号は削除・置換、5号の丸めの水準は設計者の判断。
連結符号を断つ(対応表を残さない)ことと、特異な記述を消すことが、 仮名加工との決定的な違い。
規則を満たした ≠ 十分に匿名。 該当者の人数を数えて、丸めが足りているかをデータで確かめる。
ここからは攻撃者の視点で、加工が不十分だとどうなるかを見ます。
出典: 個人情報保護委員会事務局レポート「仮名加工情報・匿名加工情報 ―事例編―」2.1.1 購買履歴の事例1(ID-POS データ) サイト: https://gghatano.github.io/pets-seminar-01/ ライセンス: 教材コンテンツ CC BY 4.0 / コード MIT