興味深い分析の候補#
初期 EDA(analysis/01〜05)で見えた範囲から、次に掘れそうな問いを挙げる。
各項目に 必要なデータが揃っているか を明記した。
このデータセット単独で完結しない問いは、外部データが要る旨を書いてある。
難易度の目安:
- ★ = 既存の前処理でそのまま書ける
- ★★ = 追加の集計設計が要る
- ★★★ = 外部データか、統計モデルが要る
A. 国とメダル#
A-1. 「メダル効率」— 参加選手あたりのメダル数 ★#
派遣人数が多い国が多く取るのは当たり前。1 人あたりで見ると誰が効率的か。 小国が上位に来るはず(ジャマイカ、ケニア、ノルウェー)。
- データ: 選手数は全期間可、メダルは 2016 年まで(または
medal_tableと参加者数の突合) - 注意: 団体競技中心の国は選手数が膨らむため、種目タイプで層別しないと誤読する
A-2. 冬季に強い国・夏季に強い国 ★#
夏冬のメダルシェアの比を取り、散布図に置く。ノルウェーの冬季偏重、 インドの夏季偏重が両端に出るはず。「その国は何で稼いでいるか」の入口。
- データ:
medal_tableのみで完結
A-3. 一発屋の国と常連国 ★★#
初メダルからの継続性。1 回だけ取って以後 0 の NOC はどれくらいあるか。 メダル獲得国の広がり は「増えている」までしか言っていない。
- データ:
medal_tableのみで完結
A-4. ボイコットの影響 ★★#
1980 モスクワ(西側不参加)と 1984 ロサンゼルス(東側不参加)で
メダル配分がどう歪んだか。editions$notes にボイコットの記載がある。
- データ:
editions$notesをパースするか、手で対象大会を指定 - 注意: どの国が実際に不参加だったかは選手データの出場実績から復元できる
A-5. 開催国優位の分解 ★★★#
開催国優位 は「91% の大会で上振れ」までしか 言っていない。上振れが (a) 出場枠が増えたこと、(b) 1 選手あたりの成績向上、 (c) 自国有利な種目の採用、のどれで説明されるかを分ける。
- データ: (a)(b) は選手データで可能(2016 年まで)。(c) は種目採用の経緯が要る
- 注意: 因果推論の枠組みが要る。単純比較では交絡する
B. 競技と種目#
B-1. 競技ごとの「メダル寡占度」★★#
上位数か国が何割を取るか(HHI やジニ係数)。 陸上短距離のような寡占競技と、射撃のような分散競技が分かれるはず。
- データ: 種目単位メダル(
event_medals)で 2016 年まで
B-2. 消えた競技・現れた競技 ★#
綱引き、ラケッツ、芸術競技(1912-1948)、近年の スケートボード・サーフィン・ブレイキン。実施期間を年表にする。
- データ: 完結。
art_competitions_athletesという専用データセットもある - 面白さ: 芸術競技は「メダルを取った芸術家」という珍しい題材
B-3. 種目数の増減と参加国の広がりの関係 ★★#
種目を増やすとメダルを取る国は増えるのか、上位国が取り切るのか。 種目構成の変化 と メダル獲得国の広がり を繋ぐ問い。
- データ:
editions$medal_eventsとmedal_tableで完結
B-4. 団体競技と個人競技でメダル分布はどう違うか ★★#
団体競技はメダル 1 個に多人数が乗るため、「メダリスト人数」で見ると まったく違う勢力図になる。IOC 方式との比較。
- データ: 完結(2016 年まで)
C. 選手の身体と年齢#
C-1. 種目内での体格と成績の関係 ★★#
競技ごとの体格 は競技間の差を示したが、 同じ種目の中で背が高い選手はメダルを取りやすいのか。 バレーボール、水泳、ボート、走高跳などで検証できる。
- データ: 1960-2016、身長体重が揃う行のみ
- 注意: 生存バイアス。体格に恵まれない選手はそもそも五輪に来ない
- 実装済み:
analysis/05_body_medalist_gap.R(種目 × 性別 × 年代の z 化)と、 それと独立なanalysis/10_body_medalist_yearly.R(大会内でメダリストと 非メダリストの平均身長を引き、競技ごとに分布を見る)の 2 通り。 後者は時代の大型化を年度内の引き算で相殺するため標準化を要さない。 両者の順位が一致することが、差が手続きの副産物でない傍証になっている。 - 実装済み:
analysis/11_body_size_vs_build.R。「体格が効く」の正体が 身長(線形サイズ)か、身長とは別の体格(BMI=肉付き)かを切り分ける。 身長と体重は相関 0.8 と連動するため体重ではなく BMI を第二軸に取る。 大半の競技は身長で説明でき、BMI が独立に効くのは力・重力系(がっしり)と 飛翔・回転系(絞り)の一部のみ。有意性は 10 と同じ id クラスタ頑健 SE。
C-2. 選手の「旬」の年齢は競技でどう違うか ★★#
競技ごとの年齢 は出場者の年齢分布。 メダリストの年齢分布と比べると、競技ごとのピーク年齢が出る。
- データ: 1960-2016
- 発展: 同一選手(
id)を追跡し、何回目の五輪でメダルを取ったか
C-3. 複数大会に出続ける選手 ★#
id 単位で出場大会数を数える。最多は何大会か、どの競技か。
馬術・射撃・セーリングが上位に来るはず(競技ごとの年齢 と整合するか)。
- データ: 全期間で完結(
idは欠損なし)
C-4. 体格の大型化はどこまで一般人口の伸長で説明できるか ★★★#
身長の時代変化 は 1960-2016 で男女とも 夏季で男女とも 7cm 伸びたことを示すが、これは一般人口の伸長と種目構成の変化が混ざっている。
- データ: 外部データが必要(各国の平均身長の時系列。NCD-RisC など)
- 注意: 国別の選手構成が時代で変わるので、単純な引き算では分離できない
C-5. BMI から見た競技の類型化 ★★#
身長・体重・BMI でクラスタリングし、競技を類型に分ける。 競技ごとの体格 を定量化したもの。
- データ: 1960-2016
D. 性別#
D-1. 女子種目が追加されてから定着するまで ★★#
競技ごとに女子種目の初出年を出し、参加国数がどう増えたかを追う。 種目構成の変化 の中身を競技別に開く。
- データ: 完結(参加は全期間使える)
D-2. 混合種目の増加 ★#
2010 年代以降に混合種目が増えている。どの競技で、どういう形式か。
- データ: 完結
D-3. 男女で体格の分散に差はあるか ★★#
種目ごとに男女それぞれの身長分散を比較する。 女子種目のほうが選手層が薄い時代は分散が大きい、という仮説が立てられる。
- データ: 1960-2016
E. データそのものへの問い#
E-1. なぜ 2018 年以降の選手個票は欠けているのか ★#
欠損率 / メダル網羅率 で見えた欠損は、Olympedia 側の整備状況か、パッケージの取り込み範囲か。
- 調べ方: パッケージの GitHub リポジトリ の データ生成スクリプトと issue を読む
- これを先に確認したほうがよい。もし単なる取り込み漏れなら、 上流の更新で解消し、2016 年で切る制約が外れる
E-2. 芸術競技の 1,480 重複行は本当に全部実在か ★#
docs/preprocessing.md 2-1 でサンプルを見て「多くが実在」と判断したが、
全件は確認していない。芸術競技だけ抜き出して精査する価値がある。
- データ:
art_competitions_athletes
E-3. team 列の使い道 ★★#
セーリングの艇名など、noc にない情報が入っている。
クラブ単位・艇単位の分析ができるかもしれない(1,395 通り)。
- データ: 完結
優先順位の私見#
まず E-1(データの制約が外れるかの確認)を済ませたい。 2016 年で切る制約が消えるなら、A・B 系の問いの射程が大きく広がる。
次に手を動かすなら A-2(夏冬の得意分野)と C-3(複数大会出場選手)。 どちらも既存の前処理でそのまま書けて、結果が直感的に面白い。
腰を据えて取り組む価値があるのは C-1(種目内での体格と成績)。 このデータセットで最も「わかっていないこと」に近い問いで、 生存バイアスの扱いを含めて設計しがいがある。