case04(再構築デモ): 弱点の評価 — 3/7¶
攻撃の設計に入る前の下ごしらえ。「なぜ集計統計が個票を漏らすのか」を、統計の種類と量・精度の面から評価します。用語は 用語集 を参照。
見るポイント¶
- 統計は個票についての方程式: 「女性は4人」「黒人の平均年齢は48.5」——こうした1文が、個票(誰が何歳・何属性か)についての制約(方程式)になります。
- 量と精度: 制約が多いほど、また各制約が正確(丸めが粗くない)ほど、それらを同時に満たす個票の組合せが減り、やがて1通りに絞られます(再構築定理)。
- 統計の種類: 人数(線形)だけでなく、平均(合計=平均×人数)も線形の情報。中央値は順序の情報。種類が増えるほど制約が強くなります。
- 秘匿(セル抑制)の限界: 一部の行を伏せても、残りの行がそのまま制約として効きます。伏せた行の情報が他の行から間接的に定まることも多く、抑制だけでは復元を止められません。
この事例で効く弱点¶
再構築を許す要因
| 要因 | 具体的な状態 | なぜ危険か |
|---|---|---|
| ① 多数の正確な統計 | 7人という小集団に対し、人数・中央値・平均を多グループぶん公表(有効な制約が7行)。 | 制約が個票の自由度を上回り、解が一意に絞られる。 |
| ② 中央値・平均を含む | 人数だけでなく平均(合計)と中央値(順序)を公表。 | 年齢という連続値まで方程式で縛れる。丸めても区間が狭ければ1点に決まる。 |
| ③ 秘匿だけに頼る | 14行中7行を伏せれば安全と考えた。 | 残る7行が制約として効き、伏せても一意に決まる。抑制は再構築を止めない。 |
丸めがあっても縛れる — 平均36.7の例
公表の平均は小数第1位に丸められています。だから合計は1点ではなく区間になりますが、区間が狭ければ整数の合計は1つに決まることがあります。
- 黒人女性は「3人・平均36.7」。真の合計は
(36.7−0.05)×3 = 109.95以上(36.7+0.05)×3 = 110.25以下。 - 年齢の合計は整数なので、110 の一択。丸めても、こうして強い制約になります。
中央値は『順序』の情報
平均は「合計」を教えるので足し算(線形)で書けますが、中央値は真ん中の人の値=順序の情報です。人を年齢順に並べると、「この集団の k 番目の人の年齢」を指せるようになり、中央値を制約として書けます(詳細は 攻撃の仕様)。
各統計の役割(再構築での効き方)¶
| 統計 | 個票への意味 | 再構築での役割 |
|---|---|---|
| 人数 | そのグループに属する人数 | 属性の割り当てを縛る(該当者数の制約) |
| 平均 | グループの年齢の合計(÷人数) | 年齢の合計を区間で縛る(丸めで狭まる) |
| 中央値 | グループの真ん中の人の年齢 | 順序に沿って特定の人の年齢を縛る |
| 秘匿された行 | (制約なし) | 伏せても、他の行が個票を定めてしまう |
→ この評価をもとに、次の 攻撃の設計 で「統計を制約に翻訳し、全解を数え尽くす」手順を組み立てます。