1枚チートシート(case04 再構築デモ)¶
出典と位置づけ: 米国センサス局の解説(Garfinkel ほか 2019, CACM)を参考に作成した仮想のデモ。数値は論文の架空ブロック(7人)。以下の「法律」は、もし日本の制度に当てはめたらという仮定の説明です。
配布・印刷について
このページはブラウザの 印刷 → PDFに保存 で1枚の配布資料として使えます(ナビ等は印刷時に自動で隠れます)。
先に知っておく4語
- 集計統計: 人数・平均・中央値など、複数人をまとめた数字。個票ではない。
- データベース再構築攻撃: 公表された集計統計だけから、元の個票を復元する攻撃。
- 再構築定理: 多数の正確な統計を公表すると、それらを満たす個票が一意に定まる、という考え方。
- 差分プライバシー: 統計に数学的に制御されたノイズを加え、個票の復元を防ぐ手法(米国2020年国勢調査が採用)。
- その他の語は 用語集 に。
事例のあらすじ¶
統計機関が、住民7人の地区について集計統計だけ(人数・中央値・平均をグループ別に)公表。 「人数の少ない欄は伏せれば安全」と14行中7行を秘匿。しかし攻撃者は公表統計だけから7人全員の個票を一意に復元した。
公開データと隠れた個票¶
| データ | 内容 | 公開範囲 |
|---|---|---|
| published_statistics(公表統計表) | 表番号 / グループ / 人数 / 中央値 / 平均(14行・7行は秘匿) | 一般公開 |
| residents(個票) | 住民ID / 年齢 / 性別 / 人種 / 配偶関係(7人) | 非公開 |
攻撃の早見表¶
| 段階 | やること |
|---|---|
| ① 変数を用意 | 総人口=7人ぶんの未知数(年齢・性別・人種・配偶)+昇順で対称性除去 |
| ② 統計を制約に | 人数=該当者数/平均=合計の区間(丸めで狭まる)/中央値=順序統計量 |
| ③ 全解列挙 | CP-SAT で全解を数え尽くし、一意かを判定 |
結果(合成データ)¶
7行の制約だけで解は1通り、真の個票と全一致:8FBS 18MWS 24FWS 30MWM 36FBM 66FBM 84MBM。
秘匿した7行が無くても一意に決まる(セル抑制は再構築を止めない)。
安易な統計公表が危険な2つの理由¶
- 技術: 多数・高精度の統計は個票の方程式になり、連立すると個票が定まる。秘匿だけでは防げない。
- 法律: 「統計だから個人情報ではない」と安易に大量公表すると、再構築で個人が特定されうる。
対策(弱点の裏返し)¶
- 差分プライバシー(統計にノイズを加える)で解を一意に絞れなくする。
- 公表する統計の量・精度を絞る(小集団の統計は特に慎重に)。
- 秘匿だけに頼らない。匿名加工の基準(case02)や再構築耐性を目的に応じて設計。
覚えておく3点¶
- 統計にすれば安全、ではない。多数・正確な統計は個票を一意に定める(再構築定理)。
- セルの秘匿は再構築を止めない。7行伏せても一意に決まった。
- 法令・委員会規則とその実装例を把握し、正しく理解して運用する。技術対策(差分プライバシー)と制度上の位置づけを揃える。